建築家・飯田善彦 蔵書キュレーションQ&A vol.2 アート

カフェ主宰・飯田善彦に、カフェスタッフから集めた蔵書についての質問を設計スタッフの塚本が纏めて聞いてみました。(雑談もあり)

第2回は、店内入って右手のアート棚についてお届けいたします。

塚本:アート系もたくさんの質問が来ています。さくさく聞いて行きますね。

まず1つ目の質問。店内に置いてあるアート系の作品集は、置く基準がありますか?

飯田:観たものとか好きなものが置いてある感じかな。アート本はどれが1番とは決め難いです。

塚本:美術館へ足を運ぼうと思う最大の理由、また企画展の選択基準はありますか?

飯田:これはちょっと観たいなと思うものはなるべく行く、なかなか行けないけれども。

塚本:これも不思議な質問なので、答えて頂けるかどうか…。

建築はアートと異なり、創造の制約が多い印象がありますが、それでもユニークたる事由は何でしょう?アートはどういう形で作品に寄与していますか?という難解な質問です。

飯田:建築は基本誰かの真似をして成り立っているよね。ある面では独自性のある芸術作品に映っても、別の観点からみると平易であることもしばしばです。

塚本:子どもの頃からアートが身近だったんですか?

飯田:いや特別そうではなかったかな。でも結構昔から観ているよ。建築やっているとアートもクソもないじゃん。

建築だってアート。例えば彫刻とすごく近かったりするじゃない。

塚本:建築の世界を選ばずに生きていたら芸術が身近ではない人生もあっただろうなと考える時があります。

飯田:でも僕らはやっぱりひとつの目標として、美術館をつくりたいじゃん。

塚本:つくりたい、です!

飯田:そういう意味ではさ、絵画も、立体の彫刻も、グラフィックみたいなものも、建築に混じり込んでいるよね。どこかへ出掛けた時は、美術館を観るし、劇場で音楽をできるかぎり聴こうとする。さっきの話に戻るけれども、建築と○○ではなく、みんな同じだよ。

塚本:建築はよい職能だと思っていて、まちを歩くだけで勉強できるところがありますよね。

飯田:まぁ、好きだからやるんだよね、ひたすら歩く訳で。旅行に行くたび裏道に入ってみたり、上ばっかり見上げて建物を眺めていたりとかの癖が出がちだな。

塚本:国内でいちばん好きな美術館・博物館・ギャラリーはどこですか?

飯田:僕のやった資生堂アートハウスはなかなかいいよ。でも今のベストはやっぱり金沢21世紀美術館じゃない?谷口さん(谷口吉郎・吉生)の建築はもちろんいいよ、だけど21美の人がごまんといる風景は凄いと思うなあ。SANAAがいくら他の美術館を設計したとしても金沢に勝るものはないよね。

塚本:Civic Prideという視点からもそう言えますね。

飯田:うん、SANAAの手がけたフランスの美術館も悪くないけれども、在り様が全然違うな。上野にも美術館が集まっているけれど、金沢のわんさか人が集う景色は格別だよね。

塚本:21世紀美術館はそれ自体を観に来る場所ですよね。飯田さんもアートを集めていますが、若い頃から変わらずに追い続けているアーティストはいますか?

飯田:居ないよ、別に。小野耕石くんかなあ。7点ぐらい持っているよ。ALCで個展を開いてくれたことがあるね。

ART FAIRは毎年足を運ぶけれども、ちょっと前の近代のほうがいいものがあるよね、何故だか。なんだろうなあ、「力(ちから)」なのかな。「力」が要るんだよ、アートも建築も。頭だけではなくて軀の力みたいなものが出てくる。美術の価値が上がっている今も勿論いろんな作家がいるし、高い評価を受けている作品があるけれども、僕は全然いいと思わない、ロッカクアヤコなんかはピンと来ないな。

他に挙げるとするならば、クリストリチャード・セライサム・ノグチアントニー・ゴームリーとかかな。自分のテリトリーの外へつながる感覚とでもいうのかな。空間や都市を想起させる作品群に自然と引き寄せられるよね。ゴームリーは、葉山の神奈川県立近代美術館ではじめて壁いっぱいに広がる見事な展示のされ方を観たのが思い出深いな。坂倉準三さんの2番目の作品が腐ってしまったのが惜しいね。

うーん、鉄はいいね。

塚本:最後に、設計の仕事で悩んだ際に、美術館でその状況が打破されたことはありますか?というまた不思議な質問です。

飯田:なんで関連付けちゃうのかなあ。基本行き詰まらないよ。こういう風に考えていくと絶対何かが出てくる、というのはある。速いか遅いかは分からないけれどアイデアが生まれる。

塚本:どうすると前向きでいられるのでしょう?

飯田:いやあ、建築家ってみんなそうだよ。コンペで負けた時なんかは本当に悔しいけれども、審査員が悪いんだって思う、ハハッ。いやあ、面白いよね、建築の世界は。またカフェスタッフを集めて質問会でもやろうか。

(次回以降につづく…?)

(vol.1建築棚インタビューへ戻る)

飯田善彦によるアート棚の蔵書ご紹介はこちらからもどうぞ📚

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建築家・飯田善彦 蔵書キュレーションQ&A vol.1 建築

カフェ主宰・飯田善彦に、カフェスタッフから集めた蔵書についての質問を設計スタッフの塚本が纏めて聞いてみました。(雑談もあり)

第1回は、カフェ入って左手の建築棚についてお届けいたします。

塚本:私が学生の頃から、建築家の職能として、建物をつくるだけではなく、場所の運営や小商い、イベントの企画などを行うことが増えてきました。世の中では、それらを「コトづくり」と呼んでいますが、そのような職能に重きをおいた最近の建築作品集を購入する予定はありますか?

飯田:買う予定はありません。

僕は、建物はつくりあげた時点で固定されやすくなる特性があると考えています。建築は時世よりも遅れて立ち上がってくるという時間性を帯びているから、社会情勢や用途などの事物に合わせてうまく調整する構築方法もあるけれども、なかなか難しいものがあると思います。

塚本:作品集と実物の印象が大きく異なった作品は何ですか?またその理由は何から来るものだと考えていますか?

飯田:実際に見るとさ、どの建築もやっぱり写真と違うよね。コルビュジェなんかは見た方がいいよ。建築をやっていると、自分の身体自体が基準になるのだけれど、空間へ入った時に作用される特有の体感は本では得られないと思う。だから写真を信じちゃ駄目だよ。ビジュアルとして善し悪しはあるけれども。実際に行って経験としてその中へ入っていくという過程がいいと思いますね。

塚本:コルビュジェのどういうところに惹かれていますか?

飯田:コルビュジェだけに惹かれている訳ではないけどさ。彼の作品ですごくいいなと思ったのはインドの建築でした。

塚本:チャンディガールですか。

飯田:うん、高等裁判所は、ほとんど外に晒されている構造だからね。議場までは行けなかったけれど、インドのコルビュジェは自由だね。フランスにあるロンシャン礼拝堂ラ・トゥーレット修道院もすごくいいし。インドに行ってびっくりしたのはものすごく自由。建築の中に入っていくとすごく開放された感じがある。

塚本:わたし、時間ができたらインドに行ってみたいと思っているんです。

飯田:アーメダバードの繊維工業会館、サラバイ邸とショーダン邸(現在非公開 GAバックナンバー32で特集あり)もあって素晴らしいよ。そこにルイス・カーンのインド経営大学があるけれども、カーンよりコルビュジェの方がずっと良かった。カーペンター視覚芸術センターが近いのだけども、やわらかく、自由だよね。システムやコンセプトという視点から入っていくと出来ない建築。

塚本:インド旅は衛生面が気になりますが、滞在中の体調はいかがでしたか?

飯田:ダメんなる。1週間すごく気をつけていたけれどもお腹を下したよ。横浜国大の学生は果敢にも河で泳いだと言っていたなあ。

そういえば(コルビュジェの従兄弟にあたる)ピエール・ジャンヌレが設計したものもあるんだよ。コルビュジェの建設現場から電気や工具をくすねて自分の王国みたいなのを造った奴がいるんだ。そういう価値観もインドは内包している訳。

塚本:また質問に戻ります。インドから北上したロシアも作品集の蔵書が多いですが、実際に渡露されたのでしょうか?

飯田:ロシアは行ったことがないです。今は行きにくくなってしまったね。アバンギャルドなところが好きだな。


塚本:ところで、名作SD選書シリーズはたくさんありますが、なぜあの15冊のみ所蔵されているのですか?

飯田:たまたま学生の当時はお金がなくて、買えるものだけ買ってそのまま今に至っているだけだよ。まぁ、好きだったら全部自身で揃えたらいいのでは。

vol.2 アート棚につづく)

飯田善彦による建築棚の蔵書ご紹介はこちらからもどうぞ📚

関内外オープン!14 出航!スタジオツアーズ

皆様いつもArchiship Library&cafeをご利用いただきありがとうございます。

近頃はだいぶ過ごしやすい気温になってきましたね。季節の変わり目は体調を崩しやすいので皆様お気をつけてお過ごししてください。

さて、本日は関内外オープン!14の出航!スタジオツアーズにALCが参加させていただきました。

関内外オープン!14は2009年に始まった横浜・関内エリアを中心に活動するクリエイターのネットワークから生まれる横浜らしい活動を発信するイベントとなっております。今回の出航!スタジオツアーズでは本にまつわる関内周辺ツアーとして参加し、多くの方にお越しいただきました。

関内がますます多くのクリエイターの方が活躍できるような魅力あるまちになるといいですね。

みなさまのご来店お待ちしております。

読売新聞 本とわたし

こんにちは!

いつもArchiship Library&Cafeをご利用いただきありがとうございます。

本日は、新聞掲載のご案内です。

読売新聞 神奈川県版 「本とわたし」のコーナーにて、代表の飯田が「チボー家の人々」をご紹介しております。

建築は社会や思想といった大きな未来を立ち上げていく側面があるというお話もさせて頂きました。

ALCの沿革にもふれられる紙面です。

ぜひご覧くださいませ。

構築の人、ジャン・プルーヴェ

こんにちは、Archiship Library &Cafeです

本日、カフェで素敵な本に出会ったので紹介します。

ジャン・プルーヴェの日本語翻訳の本です

これまでカフェにあるプルーヴェの本は洋書が多く、フランス語英語の物ばかりで写真や図面、一部文章を読んでいましたが今回カフェに新しくジャン・プルーヴェについて日本語で書かれた本が置かれました。

翻訳はアトリエ・ジャン・プルーヴェでプロジェクト・チーフといて協働していた建築家・早間玲子さん

この一冊でプルーヴェの事がかなり知る事ができ、表紙のデザインや内容も素敵だったので購入しようと考えましたが、値段が高く…お金に余裕ができるまではカフェで読むことにします。

ALC staff きのした

鷲田清一「京都の平熱」2007年

こんにちは、Archiship Library&Cafeです

本日紹介した本は2007年に出版された鷲田清一さんの「京都の平熱」という本です。

私自身、大学生活は京都で過ごしていたのでこの本は惹かれるものがたくさんあり紹介したいと思いました。

私の学生生活は鷲田さんの学生生活とは異なり、学生運動が盛んであった時代の熱気にあふれるような場面は少なく、鷲田さんの描写を見ているとその時代に少し羨ましさを感じました。やはりどの時代でも京都は学生の町だなと思いました。

Archiship Library&Cafeには建築以外の本も数多く置いているので少しでも興味を持った方がいらしたらお店に来てみてください。何かお気に入りの一冊が見つかると思います。
(まくら)