カフェ雑感 vol.2

1月に始めた自主企画「ALC CINEMA」も回を重ね、先月第3回を終了しました。若手映画監督のデビュー作品を上映するだけでなく、当の監督をお呼びして、上映後ゲストとの対談や観客との応答など、とにかく狭い空間を逆手に、親密度の高い、他ではまずありえないような試みです。
防音サッシュとはいえ街の音はやはり時折聞こえるし、スクリーンにプロジェクターで投影する手作り感満載、毎回ハラハラすることばかりですが、第1回の瀬田なつき監督は、終わってから、観客とのあまりに近いやり取りが始めての経験で良かった、と若干興奮気味に話してくれましたし、第2回の濱口竜介監督もゲストに呼んだ建築家の中山英之さんともども結構盛り上がってました。(中山さんからは後からべたぼめのハガキまでいただきました。)先月わざわざ大阪から来ていただいた安川有果監督は、やはり観客のダイレクトな反応に戸惑いながらも楽しんでくださいました。皆さん少ないギャラにもかかわらず、忙しい中を快く引き受けてくださり本当に感謝しています。
当然ですがいずれの作品も監督の個性全開、低予算でありながらよくそこまで作り込んだなと思わせる力作ぞろいで、僕はもちろん初見ですが、昔二十歳前後に名画座に通い夢中になって手当たり次第に観たヌーベルバーグやイタリアンリアリズム、アメリカンニューウェーブ、日活や東映の映画の数々に通底する感覚を久しぶりに呼び覚まされています。トークで語られる裏話や観客の鋭いツッコミ、など毎回驚かされることも多くじつに面白い。ぜひ皆さん見にきていただきこの臨場感を体験してください。僕はこの企画では裏方に徹しているつもりですが、つい出しゃばって質問したりしてしまいます。次回は11月、やはり興味深い若手の作品を予定しています。ご期待ください。

実はこの映画上映に並行して映画論、歴史など座学的な講座をやりたいと考え、横国大の梅本さんならその企画もこの場所も気に入ってくれるだろう、と思い、相談しようとした矢先に何とご本人が急死してしまいました。これには本当に驚いたし、一緒に遊べなかったことが残念で残念でしようがありません。
この時やろうとした継続的な講座という思いつきが6月から始めた現在進行中の高宮真介連続講義につながっています。カフェを始めて以来本業である建築に関わる企画をどうしようかと時折考えていたのですが、なかなかいいアイディアが浮かばずしばらく放っておきました。たまたま八雲の現場近くにある高宮さんの事務所に伺って話をしていた時、日大の教授時代にデザイン論を特別講義していた話題になり、資料を見せてもらっていた時ピンときたわけです。
講義の内容は、ルネッサンス以降の近代建築史を高宮さんなりに展開した内容ですが、この幻の講義をカフェで再現してもらいたい、とその時強く思った次第。デザインの羅針盤が揺らいでいるこの時期に、近代建築史をもう一度おさらいするのは悪くありません。
高宮さんは、谷口さんと共に僕のキャリアの中で唯一のボスですが、同時に敬愛する建築家の一人です。端正でありながらアイディアに富むデザインは、美しいだけではなく質の高い日本モダニズムの好例であることは皆さんご存知の通りです。そのような建築を作り続けている第一線のモダニストが語る近代建築史、建築論が面白くないはずがありません。すぐに企画にとりかかり、高宮さんの同意を得るのにさほど時間はかかりませんでした。
この企画のミソは、参加者を30人に限定して、1年間スクールあるいはサロンのように講義を進めることと、学生もキャリアもリタイアも素人も差別なく参加料を一律2万円としたことです。発表から申し込みまでさほど時間がなかったのですが、蓋を開けてみたら開始時間にすでに30人を超過し、あっという間に100人を数えました。仕方なく勝手に抽選させていただきましたが、落選された方には本当に申し訳なく思います。この場でお詫びいたします。
6月に初回ルネサンスから始まり先月3回目が終わったところです。バロック以降新古典主義、ルドゥー、シンケルなど僕自身よくわからない時代の建築群も新たな視点で発見的に俯瞰できました。3回を通して背景となる社会との関係等、以前には捉えられなかった見方も実感し、予想以上に新鮮な興奮を経験しています。これからいよいよ近代の核心に向かう、充実するであろう講義が楽しみです。連続講義全体を最終的に出版物にまとめたいとも考えています。

4月には吉田町のアート&ジャズという車を止めてのメインイベントに合わせて、「アート&骨董マーケット」を開催しました。僕たちは食べ物の屋台こそ出せませんが、この魅力的な町内イベントに賛同した企画です。以前から時々楽しみで骨董市に通っていますが、その内容は実に多彩です。沢山の出店者の中でも僕自身の興味に近い、気になっていた若いディーラーに思いきって声を掛けたのですが、皆さん二つ返事で集まってくださいました。2日間のイベントで、しかも両日とも異常に寒く、雨混じりの天気だったにもかかわらず何と一日当たり300人近い方たちが来場してくださり、予想をはるかに超えた興奮の二日間でした。このイベントは、この秋、11月1,2,3日、「関内外OPEN!」に合わせて第2回目を開きます。しかも前回の参加者に加え、その世界では名の通った3組が加わり更にパワーアップします。これも継続するのでご期待ください。

長々と書いてきましたが、音楽会や花と食ワークショップも継続していますし、最近3日間カフェをお貸しした演劇など新たな催しも加わり、振り幅も広がっています。スタッフの学生も4代目になろうとしています。これからも思いついたことをためらわず実践していきたい。
是非皆様の周辺にArchiship Library&Cafeをお知らせください。最新の「散歩の達人」横浜、「Hanako横浜特集」にも掲載されているのでご覧ください。

2013.09.10
飯田善彦

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